イロモネア則                   雑文へ  トップ


イロモネアという番組をご存知でしょうか。
最近レギュラー番組に格上げされた、お笑い番組です。

参加者である芸人さんは、「モノマネ」「一発ギャグ」「ショートコント」
「モノボケ」「サイレント」の五つのジャンルで観客を笑わせます。

観客はいっぱいいるのですが、その中で5人が無作為抽出され、
その5人が笑えば100万円ゲットです。

誰が考えたかは知りませんが、この番組のシステムは上手いですね。

皆さんも経験がおありでしょう。
笑っちゃいけないところで笑いたくなったことが。

会社のミーティングで、ぴりぴりした雰囲気の中、
パワーポイントに映し出された、次のスライドが、
「猿でも分かるブーメランの作り方」
だったら、必死で笑いをこらえるでしょう。

上司は「あれ、っかしいなぁ」なんていいながら、ごまかします。
どんな経緯で紛れ込んだかは知りません。
しかし、上司のスライドが映すのは、試作高分子の分子量やTgではなく、
紛れもない「ブーメランの設計図」です。

これがもし、同期との発表練習だったら、
「お前のスライド、変なの混じってるよ」
「まじで」
「あはは」
で、終わります。

しかし、今はミーティング中、しかも上司の発表です。
間違っても笑えません。
笑っちゃいけない、笑っちゃいけない、
念仏のように唱えます。
落ち着いたところで視線を戻したら、
次のスライドで、猿がブーメラン投げてバナナを刈り落としていた。
俺ならここで堤防決壊。爆笑します。

こんな感じで、人には、笑っちゃいけないときに笑いがこみ上げる習性があるようです。
話をイロモネアに戻します。

イロモネアでは、芸人さんは5人を笑わせたら100万円です。
そうなるとお客さんは、「そう簡単に渡すものか」と思います。
で、墓穴を掘るのですw
笑っちゃいけないと思うと、芸人さんが面白く見えて仕方ない。
「わははは!」 ドン「CLEARED」

上手いなーと思うのは、この演出ですね。
誰も笑うなと強制するわけでもないのに、気がついたら、
笑ったら負けという空気がある。
しかも笑ったら負けなのは、観客です。一般人です。
これを見ている視聴者は、そこに自分をダブらせ、
いつの間にか、6人目になりきってしまいます。
で、空気が伝染して、墓穴を掘って爆笑する。
「イロモネアは面白かった」と思っちゃいます。

どんな諸葛孔明が後ろに潜んでいるか気になります。

この法則を「イロモネアの法則」と勝手に名づけます。


イロモネア則の体験談があります。

あれは僕が中学生の時です。
僕は学習塾に通っていました。

塾の先生というのは、面白い人が多いです。
授業の構成に、笑いを確実に絡めてきます。

ある先生は、生徒に質問して答えられなかった時の、
時間切れの合図のために、3980円のベルを買って来て、
ちーん。
と鳴らすという小細工までしてました。

この、ちーん、が笑えるんです。
いかにも「ああ、終わったな」という哀愁を漂わせる音なんです。
で、次の瞬間にも自分が指される可能性があるので、
イロモネア則で、緊張感が笑いに変わります。

その先生、あだ名は「ウッシー」だったんですが、
ウッシーは見てくれはヤクザです。
リーゼントにスーツです。
初対面なら何も言わずに財布を差し出したくなります。
でも、ちーん、とかしてるんです。
気さくでいい先生でした。

でも、怒るとこわい。

ある生徒が、宿題をサボってきました。
その生徒は、サボりの常習犯で、ウッシーの堪忍袋の緒が切れました。

普段からは想像も出来ないようなウッシーの姿にみんなビビリます。
俺もサボりは止めようとこっそり決心します。

止まらない怒号。
泣き出す生徒。
完全に時間が凍っていました。

「もういい、席につけ!」

ウッシーはいらだたしげに吐き捨て、教卓に教科書を叩きつけます。

ちーーーーーーーーーーん・・・・・・・・・・・・・・

三秒くらいした後でしょうか。
教室は爆笑の渦に包まれます。
完全にイロモネア則です。


このように、日常に潜み、虎視眈々と私達を狙うイロモネア則。
今度ノベル作る時に応用しようかなと思ってます。



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