カップルウォッチ


クリスマス、というイベントがあります。
イエス・キリストさんの誕生日にちなんで、キリスト教圏では盛大なお祝いをするようです。

日本でもなぜかクリスマスは国を挙げてのお祝いになります。
まあいいことだと思います。どういう形にせよ、人の誕生日を祝うのが悪いはずがない。

ただ、もっぱら盛り上がるのがカップルばっかりというのはいただけない。
なぜ、ああもクリスマスにカップルははしゃぐのでしょうか?

ぶっちゃけます、これは嫉妬です。

しかし、カップルが枚挙して大通りをうろうろするのは腹が立つものです。
「なぜお前達はそんなに幸せそうなんだ?」
僕は1人で悲しみに暮れます。どうして俺だけ1人なんだ……

カップルばかりがクリスマスを謳歌している。
世界的イベントを独占している。
これを許していいのか。(←反語)

俺にだってクリスマスに参加する権利はあってもいいはずだ!
そんな事を思いつつ発案した企画、それが、カップルウォッチです。

クリスマスには、大手ショッピングモールにツリーが飾られます。
そこにカップルどもはこれでもかと集結して、ツリーに見入ります。
そんな群集どもを思う存分ウォッチして嘲笑しつつ、孤独をしんみりかみ締めるという、
クリスマスにしかできない自虐的マゾ的な企画です。

三年前の冬にこの企画は決行されました。
面子は僕と、研究室の後輩君(強引に拉致った)でした。

後輩君をらちった後、寒空の下、男二人で、
県内の巨大モールに向かいます。
後輩君は道中、
「先輩、もうやめましょう。帰りましょうよ」
と、精一杯の抵抗をしていましたが、
「駄目だ、男なら初志貫徹だ」
アビリティー「先輩」を使って、ねじ伏せます。(←下衆)

モールに近づくにつれ、明らかに人ごみに占めるカップル率が高くなってきます。
そんな中、男二人が肩を並べて歩いている……
悲しすぎます、空しすぎます。
この時点で企画の半分は達成されていました。
すれ違うカップルには憎しみをこめてガンたれます。(←最低)
ヤクザカップルからは目をそらします。(←チキン)
そんなこんなで、ひたすら歩きました。

そして、着きました。
青色発光ダイオードを惜しげもなく使ったツリーの元にたどり着いたのです。
はっきりいって回りはカップルしかいない。
ごくまれに女の子グループがいましたが、間違っても男グループはいません。
どこを見てもカップル。
上を見ても、高層からツリーを見下ろすカップル。
カップルにおぼれて溺死しそうでした。
ウォッチどころじゃない、嘲笑どころじゃない。
見ようとしなくても、いやでも視界に入ってくる。

そこで、妙な点に気づく。
……カップルがこっちを見ている。

確かにツリーを見ているのが大多数ですが、結構多くのカップルがこっちを見ているんです。
目を合わせると、避けられる。
振り返ると、カップルが視線をそらしている。
そこで、俺は気づきました。

僕達は完全に異分子でした。

クリスマスに男二人でツリーの下にいる。
どう見ても、ホモカップルです。

そりゃ、注目されるわw

その後はくるくる自転しながら、カップル達と
見る→そらされる
の、無限ループを楽しんでいました。

死にたくなりました。

俺「帰ろうか……」
後輩君「ハイ……」

そんな感じで、視線を背後に感じながら
俺達はモールを後にしました。


思い出しても、むなしさ満点のカップルウォッチです。
翌年に再度決行しようとしたら、後輩君がガチで抵抗したので諦めました。

そんな、素敵なトラウマをあなたの心の1ページにして見ませんか?
あと8ヵ月後にチャンスはまた来ます。
暇だったらカップルウォッチをお勧めします。
なお、何が起きても僕は責任を取れないので悪しからず。



企画